川崎かぐやハープ教室|横浜市都筑区センター北徒歩4分|アサフ音楽院 Kaguya kawasaki Harp Class, Tuduki-ku Yokohama, 4min. from Center-kita sta.

インタビュー

絵と本と音楽に囲まれて

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子どもの頃、絵を描いたり本を読んだりするのが何より好きでした。鉛筆を片手に、少女漫画風のキャラクターを描いては、そこに自分だけの物語を添えて遊んでいたのを思い出します。その頃のノートが今も手元に残っています。

家の中は常に音楽が流れていました。クラリネット奏者の父、ピアノ教師の母、そして8つ上の姉。私にとって音楽は「特別なこと」ではなく、「みんながやっているもの」でした。

父は本当に優しい人で、よく一緒に遊んでくれました。あるとき父が、すぐ原っぱに出られるようにと、家の裏に小さな出入り口を作ってくれたんです。私はそこで、毎日のように友達と虫取りをしたり、犬やうさぎ、亀など、たくさんの動物たちと過ごしたことを覚えています。

母はピアノを教えていましたが、厳しく教えられた記憶はほとんどありません。楽しくピアノに向かえるよう、いろいろな工夫をしてくれました。ただ、「練習をしないこと」についてだけは、とても厳しく見ていたように思います。

スズキ・メソード

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3歳から小学校に上がるまで、スズキ・メソードのピアノ教師だった母に連れられて、大阪からスズキ・メソードの本拠地、松本までレッスンに通っていました。創始者である鈴木鎮一先生は、会えばお声をかけてくださり、ご自宅に招いてくださったりと、母も私も大変可愛がっていただきました。

子どもといえども妥協はせず、音楽のエッセンスを詰め込んだレッスンをしてくださったのは、ピアノの片岡ハルコ先生です。当時の録音を聴くとそのことがよく分かり、驚きと感謝の念でいっぱいになります。

たくさんの推薦コンサートや、オーケストラとの共演の機会もいただきました。両親の教育とスズキ・メソードは私の原点です。

ハープの道へ

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小学校の高学年頃からピアノコンクールに挑戦し始め、東京で本格的にレッスンを受ける話も出てきました。

けれども、層の厚い世界でのことです。同世代の才能を目の当たりにする中で、一生懸命続けてきたピアノに対して、ふと「自分はこのままでいいのだろうか?」という気持ちが芽生えはじめました。

そんなとき、ピアノの先生のコンサートで、ヴァイオリンの伴奏として演奏されていたハープを初めて生で見たのです。華やかで優雅な見た目に、素朴で温かい響き。「こんな楽器があるんだ」と心を奪われました。

同時に、「自分で選んだ楽器をやってみたい」「今からでも間に合うかな?」という思いが胸に湧き上がり、思い切って両親に打ち明けました。案の定、反対されましたが(笑)。

父も母も、「きっと諦めるだろう」と思っていたのかもしれません。ハープの先生のところへ一緒に伺った際、先生には「ピアノをやめていいのか、よく考えてからもう一度来なさい」と言われました。

でも、私の気持ちは変わりませんでした。改めて先生のもとを訪れると、今度はとんとん拍子に話が進み、ハープの世界へと足を踏み出すことになったのです。

人生の転機と出会い

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こうして中学2年生のときにハープの道を選んだ私ですが、これまで出会った先生方からは、本当に多くのことを教えていただきました。

極度に緊張しやすく、本番で力を発揮できなかった私を、「10年続けていれば必ず変わるから」と励ましてくださった篠﨑史子先生。ハープを弾くことの楽しさを教えてくれたスーザン・マクドナルド先生(2025年5月に他界されました)。そして、90歳を過ぎた今も音楽に真摯に向き合い続けていらっしゃる吉野篤子先生。

手ほどきをしてくださった田淵順子先生、ハープ愛に溢れたヨセフ・モルナール先生、ピアノの先生方、ソルフェージュの先生方……、挙げればきりがありません。全ての先生方に心から感謝しています。

また、演奏家として、世界的な指揮者の方々とご一緒させていただく機会にも恵まれました。小澤征爾さん、スタニスラフ・スクロバチェフスキさん、ジャン・フルネさん、グスターボ・ドゥダメルさん、アンドレア・バッティストーニさん、アラン・ギルバートさん……。

音楽を学び続けてきたからこそ得られた出会いや経験は、すべてが私の財産です。

教えることが、私にくれるもの

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今、私は自宅であるアサフ音楽院と、中高一貫校、北鎌倉女子学園の音楽科でハープを教えています。「教えること」は、知らなかったことを研究することであり、自分を知ることでもあります。一生を通して学び続けられる、ありがたく、素晴らしい仕事です。

また、私自身、物心ついた後にピアノから転向してハープを学びはじめたので、試行錯誤してきたプロセスが、教える場面でとても役立っているのを感じます。

一方で、教えることには責任も伴います。もしも演奏だけの人生だったら? また違った華やかさと過酷さがあったかもしれません。

私は編曲も好きですし、何より教えることが大好きなので、レッスンの時間は本当に幸せなひとときです。その幸せな時間は生徒さんからいただいているもの。だからこそ、できる限りたくさんお返ししていきたいと思っています。

ハープを学ぶということ

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自分の指から音楽が生まれ、だんだんと深く、広く、できることが増えていくのは、本当に素晴らしいことです。芸術というのは不思議なもので、美しいもの、素晴らしいものに出会うと、心が揺さぶられますよね。クラシック音楽の作品は、人類への贈りもののように思います。

作曲家自身は恵まれない人生を送った方も少なくないのですが、それでも、身を削って生み出さざるを得なかった傑作を私たちに遺してくれました。そうした作品と日々向き合い、すぐそばに置いて生きていけることは、本当に幸せなことだと思います。

音楽を楽しむという幸せ。そして、深く、際限のない学び。 一歩一歩、より美しい音を目指して鍛錬を重ねていくことは、変化の速いこの時代においても、人生を豊かにしてくれるもののひとつではないでしょうか。

Message

親御さんへ
ハープという楽器は、比較的早く綺麗な音を出せる楽器です。初めからストレスが少ないという点で、気持ちよく音楽に向かっていけます。音楽を学ぶことは、人生を学ぶことにもつながります。興味があればどうぞ、一度体験にいらしてください。ハープの音は、ご家族の癒しにもなるかもしれません。

大人の方へ
ハープは大人の方が長く楽しむのに最適な楽器です。ご自身の生活に、彩りと充実感をもたらしてくれます。小型のアイリッシュハープもありますので、まずは音を出してみてください。弾き方で音が変わるので、研究のしがいがあります。日常から離れて集中する時間は、リラックスにもつながりますよ。

インタビュー後記

「かぐや」というお名前は、先生のお父様であるクラリネット奏者・川崎良一先生(アサフ音楽院創設者)が、旧ソ連で藤原歌劇団の公演に参加されていた際、相談された方が名付けてくださったそうです。演目は『かぐや姫』。当時の厳しい時代状況の中で、公演は大成功をおさめ、帰国後にかぐや先生が生まれました。

「天を慕う存在であれ」。そんな願いが込められているお名前なのだそうです。

ところで、先生が幼少期に描いていたイラストには、物語が添えられていたとのこと。どんなお話だったのでしょうか?

「悲劇のヒロインの話です。悲劇的なものに憧れていたんです(笑)」(かぐや先生)

なるほど。影があるからこそ、光が生まれる。偉大な先達の遺した音楽、そして時に困難な人生とも向き合い、美しい音に昇華していく。音楽家であり、教育者である川崎かぐや先生の本質を、垣間見たように感じました。

(インタビュー・構成 宮野美幸)

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